大阪地方裁判所 昭和41年(ワ)3726号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告が昭和四一年四月八日より同年六月二日まで一三回にわたり今治市の訴外山岡鉄夫に代金引換貨物として運送された油の代金合計一四万四、五九〇円を受領したことは当事者間に争がない。
<証拠>によれば、原告は運送取扱業を営む訴外三興海陸運輸株式会社に対し代金引換を指図して右油の運送の取次を委託したところ、右訴外会社では同じく運送取扱業を営む被告に対し代金引換を指図して右油の運送を委託し、右委託に基いて被告は運送取扱業者として運送業を営む訴外住友金属鉱山との間に右油の運送契約を締結し、住友金属鉱山の運送した右油を着地の今治市において着地運送取扱人が訴外山岡鉄夫に対し代金引換のうえ引き渡し、右代金は着地運送取扱人から被告は送金されたことが認められる。
ところで運送取扱人は物品運送の取次、すなわち運送契約締結の引受をなすものであつて、右委託に基き運送人と運送契約を締結するとき、右運送契約上の効果は、運送取扱人と委託者との間では代理に準じて当然に委託者に帰属するが、しかしながら運送取扱人は委託者の名においてではなく、自己の名において運送契約を締結するのであるから、相手方たる運送人は委託者との間には直接の法律関係を生じない。右の場合委託者が運送人に対して運送契約上の権利を直接行使するがためには、運送取扱人から右債権の譲渡を受けるを要する。本件の如く、運送取扱人が自らは運送人と運送契約を締結することなく、他の運送取扱人をして自己が引き受けた運送契約の締結を行わせる場合も同様である。すなわち、後の運送取扱人が取得した運送人に対する運送契約上の効果が先きの運送取扱人との間において代理に準じて当然に先きの運送取扱人に帰属し、従つて先きの運送取扱人を通じて委託者に帰属するとしても(右によつて代金引換貨物の受取人は運送人または着地運送取扱人に代金を支払えば、売主に代金を弁済したことになるのである)、後の運送取扱人は委託者に対して直接に何等の法律関係に立つものではない。
被告は、前記の如く運送取扱人として同じく運送取扱人である訴外三興海陸運輸株式会社から代金引換の指図を受けて油運送の取次を委託されたのであるから、被告の立場からみると、右指図により運送品たる油と引換に着地運送取扱人を経て受領した右油の代金については、これを訴外会社に対してのみ交付する義務を負うものといわなければならない。
<証拠>には被告作成の代引貨物引受証として、「代金取立済の上は本証並に貴領収書と引換にお支払致します」との記載部分があるけれども、右は被告が右引受証と引換えに代金を支払つたときは免責される旨を表明した。いわゆる免責証券とみるべきものである。
以上に反して、原告は、訴外三興海陸運輸株式会社が原告を代理して被告と運送契約を締結したというけれども、右訴外会社と原告との間においては、代理に準じる関係が生じるとはいうものの、訴外会社が運送取扱人として運送の取次をしたものである限り、原告の名においてではなく訴外会社自らの名において被告と契約に及んだといわなければならないから、訴外会社をもつて原告の代理人そのものということはできない。訴外会社は被告に対しては原告から独立した行為主体である。(渡辺一弘)